著作権法1条につきまして

(1)著作権法1条に掲げられている、①著作者等の権利の保護、②著作物等の文化的所産の公正な利用への留意、又は③上記①及び②の調整を図るためには、どのような制度設計が妥当か。
 (A)現行著作権法の評価、立法(改正)論、これまでの判例の評価について
著作権法は、著作物・実演・レコード・放送・有線放送に関する著作者の権利・隣接する権利を定める。著作権法の趣旨は、文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することにある。著作権は著作財産権、(17Ⅰ、21~28)、著作者人格権(17Ⅰ、18・19Ⅰ・20Ⅰ)、著作隣接権・実演家人格権、著作者を保護することにより、権利が複数の権利の束として構成されている点が著作権法の特徴といえよう。無方式主義で権利が認められる点で、特許法等他の知的財産権より保護の対象が広がったことになり、著作者の権利がすぐに認められるようになる結果として、現代社会の動向に合った法律であるといえる。
 著作権は、もともと印刷文化から発生した権利である。著作者が持つ利益を害されないようにするということが主眼となっていた。しかし、著作権は他人利用を無断に限る利用にだけ排除するのみであり、著作者の承諾があれは使用できる。この点は商標権とは異なる規定であり、著作権法の立法化につながった。
 これまでの判例の評価として、アイデア自体は著作権法上の権利ではないと認定する凡例があるが、アイデアか思想又は感情を創作的に表現したものかの判断があいまいであるといえる。数学論文野川グループ事件控訴審では、著作者が主張するものについては著作権法上の著作物に該当しないものと解される判旨したのに対し、日本の城の基礎知識事件では、著作者が主張するものについては著作物と認めることはできないとしている。裁判では、自然科学系・社会科学系の論文等においては、その性質上、表現に一定の枠があることが多いため、アイデアそのものと判断されやすい。しかし、アイデアを表現する執筆者の思想は少なからずあらわれるものであり、よりその著作性は精密な判断が必要となろう。具体的判断は困難であるため、実質的に個別具体的に判断するべきだと考える。
 (B)他の法律による解決(現行の他の法律の活用でも、新たな法律を設けるのであっても構わない)について
 第1に、アイデアを保護するためには、特許法上の申請をすることが考えられる。
 第2に、著作物の侵害者の故意・過失の認定が容易で、侵害行為と結果との間の因果関係が認められると解される場合は、民法上の不法行為(709条)の規定を利用することが考えられる。
 (C)法律による解決を図るのではなく(あるいはそれと並行して)、契約や社会(業界)の仕組みにおける解決を図るべきと考えるのであれば、それについて具体的に述べよ。あるいは、具体的解決策は模索中である場合には、現在の社会の仕組みや契約の結び方等についての「問題提起」だけでもよい、について
 JASRACなどの保護団体を包括し、個人の著作権をも保護する著作権管理団体を創設することを提言する。JASRACでは、著作権を保護するために特定のマークを著作物につける等行っているが、すべての種類の著作物においてそれが認められるわけではない。この限定された著作権の侵害からの保護を個人レベルの著作権まで広げるために、日本独自の著作権マークを指定し、著作物に表示されることを義務づける制度が妥当だと考える。バリアフリーにも配慮し、音や点字でのマークも規定する。このマークを確認すれば、著作物だと瞬時に分かるため、侵害行為から自己の権利を守るには有用である。また、包括する団体にマークを指定する権限を認めることと、当該団体に対する告発制度を規定すればより実効性のある制度となろう。近年日本ではADRが注目されているが、日本の著作権マークを規定すれば、その制度を利用して個人の著作権の保護をしやすいことになるだろう。
 (D)その他、解決方法、問題提起等があればそれについて述べよ、について
 インターネット犯罪等、一国の法規制では対処することができない問題をどのように規制していくべくかについて、大きな問題意識を持っている。グローバル化した社会において、この問題は著作権の未来を揺るがす試金石となりうると考える。
 (2)著作権法特許法その他知的財産法(及びその周辺領域)に関連する問題について、疑問や意見等があれば、これらについて述べよ。内容は、日常生活におけるある行為が違法か適法か疑問に思っている等、どのようなことでも構わない、について
 私は中国における海賊版の問題について大きな問題意識を持っている。国際的な問題としてニュースを騒がせているが、対策はいつも後追いであり、著作者の権利が等閑視されていることに憤りを感じる。
 中国で海賊版が普及する理由として、安価であることがあげられる。特に日本のアニメは需要が高く、海賊版の普及に拍車をかける。CODAの調査によれば、2007年6月13日時点で中国(大陸)、香港、台湾を対象として現地政府取締機関と共同で計3587件の日本コンテンツ取締活動を実施したところ、「2005年1月から2007年4月までの2年4ヵ月間で、映画、アニメ、音楽、ゲームなどのDVD、VCD、CD約374万枚の海賊版を押収。逮捕者は延べ1242名。1枚当たりの市場価格を仮に1300円とすると、押収物の総額は48億6000万円に上る」という結果を出している。
 この問題について、国際知的紛争がどのようになされるのかについて深く学びたい。
 また、コンピュータウイルス対策についての法整備が注目される。ウイルスによってパソコン内の著作物が盗まれたり、破壊されたりする危険性があり、新たなウイルスは日ごとに開発されるため、対策が追い付かず、問題である。コンピュータの発達により、これまでに増して一層著作権の保護が要請される(YouTubeなどの動画サイトでは、著作権対策を破った動画が多数投稿されている実態がある)。
 我々の社会の発展とともに、新たな文化が創造され、それを享受することになるが、反対利益として、思わぬ不利益を被ることがある。その例が著作権において顕著にでている。法規制は常に侵害行為の後追いであるところ、早急な対策が必要となると考える。